こんにちは、ふみチッカです。
千早茜さんの小説「透明な夜の香り」を読みました。
わたしにとっては、初読みの作家さんだったんですが、
こちらの小説、シンプルに、好きでした。
・単純なお話で終わらないストーリー
・情景がイメージできる丁寧な描写
・香りを通して自分の中に新たな感覚が開かれる
いろんなツボポイントがあったので、みなさんにぜひご紹介させて頂きます。
ネタバレなしのざっくり感想です。
「透明な夜の香り」のあらすじ
香りは、永遠に記憶される。きみの命が終わるまで。
元・書店員の一香がはじめた新しいアルバイトは、古い洋館の家事手伝い。
集英社サイトより
その洋館では、調香師の小川朔が、オーダーメイドで客の望む「香り」を作る仕事をしていた。人並み外れた嗅覚を持つ朔のもとには、誰にも言えない秘密を抱えた女性や、失踪した娘の手がかりを求める親など、事情を抱えた依頼人が次々訪れる。一香は朔の近くにいるうちに、彼の天才であるがゆえの「孤独」に気づきはじめていた――。
「香り」にまつわる新たな知覚の扉が開く、ドラマティックな長編小説。

洋館×天才×秘密=小説にぴったりの要素ですね。
なんかお話に古い洋館とか出てくるの好きです。
非現実的で、想像するのが楽しくて、まさにお話の世界という感じがして。
”あの洋館にたったひとりで住んでいるなんて、さびしくないのだろうか”っていうセリフ、いろんな小説で見かけるような・・・わたしがそういうシチュエーションが好きで、そんな小説ばっかり読んでるからですね。
ご多聞にもれず、今回も、”香りの天才”である小川朔という男性がひとりで洋館に住んでいます。
こうなってくると、洋館に住む主と、そこで働く女性のラブストーリー?とありがちなお話を想像をしてしまいますが、そんな単純なお話ではありませんので、ご安心下さい。
夜にしっとり読みたいお話

私は休日の昼間にこの本を読み出しましたが、題名からも感じとれるように、この小説は夜に読むのをおすすめします。
本を読むシチュエーションって、その本ごとにあると思います。
朝に読むのが良い本とか、夏に読みたい本、カフェで読みたい本、旅先で読みたい本、ゆっくり読み進めたい本、スピード感を持って一気に読みたい本・・・
「透明な夜の香り」はやっぱり夜ですね。
夜でなくても、静かにゆっくりと時間に読んでほしいです。
文章やお話のテンポ感、内容、雰囲気がしっとりしていて、夜にぴったりなんです。
できればお気に入りの香りと、紅茶なんかもあれば最高です。
世界にたったひとつの香りを作る調香師

主人公の女性、一香が家事手伝いをすることになった洋館に住む、小川朔。
この朔さんが天才的な嗅覚の持ち主で、初対面の一香の汗のにおいから、一香がしばらく身体を動かしていないことを言い当てます。
その他にも、
香りでその人が使用しているファンデーションやリップクリーム、化粧水などが分かったり、
口臭から病気を指摘したり、
警察犬のように香りで探し人を見つけることができたりと、
尋常ではない嗅覚。
その嗅覚をもって、依頼人から求められる”世界でたったひとつの香り”を作り出す、調香師という仕事をしています。
その依頼は、ただ単に好きな香り作って、という依頼ではありません。
・ある人の体臭の香りを作って欲しいとか、
・病気の人のために生きる力を呼びさます香りを作ってほしいとか、
それぞれに独特の依頼になっていて、ここにドラマがあります。
普段わたしは香水もつけないし、アロマなんかも焚かないし、香りを気にしていない生活をしています。
この小説を読んでいると、効能だけでなくって、恐さも感じるくらいの、香りの影響力の大きさを感じました。
確実に、読む前と読んだ後の、香りに対する感覚が変わりますよ。
ね、気になってきたでしょう?
お話の中には、香り・花・おいしそうな食べ物でいっぱい
個人的に、千早さんの文章は、読んでいてすごくイメージがわきました。
ここは、作家さんと読み手の相性があるので、全然イメージがわかない本もあります。イメージできないと、読み進めるのがストレスに感じるときがあって・・・。
でもこの小説は、丁寧に文章を書かれているので、読みながら情景が頭の中で想像することができて、読み進めるのが楽しかったです。
小説の中には、香りに関することはもちろん、洋館のお庭にあるハーブや色鮮やかな花々、そして一香がつくるおいしそうな料理など、読んでいて目にも楽しいものがたくさん出てきます。

朔は、嗅覚が優れているだけではなく、調香師という仕事をしているだけあって、香りに関する知識が深く、作中でハーブの効能をはじめとして、香りに関する情報を詳しく語っていて、興味深く読むことができます。
また一香は、朔の指示に応じて食事を作るのですが、これがおいしそうなんですね。
はじめにバイトの面接を受けた際に、一香が「得意というほどではないですが、ひとり暮らしなので、一通りの料理はできます」と言っていました。
しかし朔が依頼する料理というのは、カレーとか、肉じゃがとか、オムライスとか、そういう料理ではなくって、
「苺とミントのスープ」ですよ。
わたしが一香の立場だったら、「ごめんなさい、無理です」と書き置きして逃げたくなるような料理です。
一応レシピもあるんですが、食べたこともないし、味も見た目も完成形が全く想像できないので、レシピがあっても作れる気がしません(笑)
それなのに一香はさらっと朔が望む料理を作っていて、脱帽です。
他にも料理は出てくるので、私のように食べ物が出てくるお話が好きな方におすすめです。
閉じ込めていた一香の秘密、そして朔との関係は・・・
主人公の一香は、心に何かを抱えた人です。
だれにも言えない秘密があったんですが、朔が作った香りにより、記憶が呼び出され、その秘密を解放することになります。
そして、朔との関係はどうなっていくのか・・・
このお話がどうなっていくのか、どんな終わり方をするのか、ぜひ読んでみて下さい。
わたしにとっては、「なるほど、そうなったかー」という感じの、予想していない終わり方でしたが、無理やり感のない、好感の持てる すっきりしたラストだったな、と思いました。
夏の夜の読書にぜひおすすめします。
この小説が好きだったので、他の千早茜さんの作品も読んでみたいなー。
それでは、お読み頂きまして、ありがとうございました!!
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