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家族・仕事・生き方とは?迷える人におすすめ。伊吹有喜さんの小説「雲を紡ぐ」

小説
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こんにちは、ふみチッカです。

伊吹さんと言えば「四十九日のレシピ」「風待ちのひと」、「カンパニー」などが有名ですね。

私は「彼方の友へ」で初めて伊吹さんの作品を初めて読み、さらに「なでし子物語」シリーズでファンになりました。

今回は2020年の1月に発売された「雲を紡ぐ」を遅ればせながら読みました。

この本は、家族との関係、仕事との向き合い方、自分に自信が持てない方、などなど・・・人生に悩める方におすすめの本になっています。

もちろん私のように伊吹さんの書く文章が好きな方は、今回も素敵な言葉たちがいっぱいですので、絶対におすすめです!

それでは感想とともにご紹介します。

「雲を紡ぐ」のあらすじ

文藝春秋様のサイトより、あらすじをお借りしました。

「分かり合えない母と娘」
壊れかけた家族は、もう一度、一つになれるか?
羊毛を手仕事で染め、紡ぎ、織りあげられた「時を越える布・ホームスパン」をめぐる親子三代の「心の糸」の物語。
いじめが原因で学校に行けなくなった高校生・美緒の唯一の心のよりどころは、祖父母がくれた赤いホームスパンのショールだった。
ところが、このショールをめぐって、母と口論になり、少女は岩手県盛岡市の祖父の元へ家出をしてしまう。
美緒は、ホームスパンの職人である祖父とともに働くことで、職人たちの思いの尊さを知る。
一方、美緒が不在となった東京では、父と母の間にも離婚話が持ち上がり……。
実は、とてもみじかい「家族の時間」が終わろうとしていた――。

文藝春秋BOOKSサイト 伊吹有喜「雲を紡ぐ」より

この物語の主人公は、高校生の美緒。

冒頭は、学校でのいじめが原因で不登校になり、家で引きこもっているシーンから始まります。

そんなときは家族が心のより所になってくれれば・・・と思いますが、親に対しても思っていることがなかなか言えない美緒。
そして美緒の気持ちに寄り添おうとしない母。
父親とはほとんど話をしておらず、ただひとりで耐えている状態です。

美緒が唯一安心できるのが、父方の祖父母からもらった赤いホームスパンのショールの中。

このホームスパンがきっかけとなり、美緒は実家の東京を出て、おじいちゃんのいる岩手県へ向かいます。

 

ちなみに本の表紙をめくって、題名などが書いてある「扉」と呼ばれる部分がありますが、本書ではこの扉がびっくりするような真っ赤な紙でできています。

おそらくこの赤が美緒のショールの赤なのかな、と勝手に思っています。

 

ホームスパンとは?

美緒の人生を変えるホームスパンですが、この本で初めてホームスパンというものを知りました。

「ホーム=家」、「スパン=紡ぐ」で、家庭で糸を紡いでつくった布というのが語源。

羊毛から糸を紡いで、手織りする織物のことで
着る人を引き立てるために、色を設計し、手仕事でつくり上げるオーダーメイドの布。

さまざまな工程を経てつくられるホームスパンは、手紡ぎ・手織りの糸なので、空気をたくさんはらみ、軽くて温かく、身体に触れる布の感触が柔らかいので、着心地が軽快になるそう。

イギリスから伝えられたホームスパンは、岩手県では伝統産業として守られたために、技術を伝え発展させることができ、今では国内生産の8割が岩手県となっています。

なかなか実物を見る機会がなさそうですが、いつか実物を見て、その色の見え方と、手触りを感じてみたいです。そしてできれば工房も見てみたいな。

 

「雲を紡ぐ」は、ゆっくり大切に読みたい本

私は1冊の小説ですと、まとまった時間をとって、だいたい1日で読んじゃうタイプです。

「雲を紡ぐ」についても、何の気なしに読み始めました。

この本は全部で7章の本になっていますが、読み始めた日に2章目まで読んで、
「これは一気に読みたくない、ゆっくり大切に読みたい本だ」と感じ、そこで読むのをストップしました。

各章は月ごとに分かれており、ちょうど1章・2章が6月のお話で、3章から7章までが7月から間が飛びつつ、3月までのお話になっています。

ちょうど読み始めたのが6月で、本の内容とタイミングが合ったのが嬉しくなり、月が替わるごとに章を読んでいくのもおもしろいかな~、とチラッと思いましたが、それでは終わりの3月まで長すぎるな(笑) と感じ、以降、日々1章または2章ずつ、じっくり読んでいきました。

 

ゆっくり読みたい理由:美緒のおじいちゃんの言葉をかみしめたいから

なぜじっくり読みたいか、と思ったか?

それは美緒のおじいちゃんの言葉をかみしめて読みたいと思ったから。

私は本を読むときに、素敵な言葉や文章があると、ノートに書き写します。

「雲を紡ぐ」では、特におじいちゃんの言葉を多くノートにとりました。

 

主人公の美緒は家出とともに、岩手県でホームスパンの職人をしている父方のおじいちゃんの鉱治郎と一緒に暮らすようになります。

(以下、「鉱治郎さん」と呼ぶのも変な感じがするので、美緒と同じように「おじいちゃん」と呼ばせて頂きます。)

東京の実家にいたときは、両親や、母方のおばあちゃんとも、話ができずにいた美緒ですが、このおじいちゃんとはずっと離れていたにも関わらず、自然に話をしています。

それはおじいちゃんが、ちゃんと美緒の話を聞く体制でいてくれて、美緒の良いところをすくい取ってくれる人だから。

美緒のことを否定せず、しかし決して甘やかすのではなく、閉じこもっている美緒のこころを解して、前へ向かせてくれます。

自分の気持ちが伝わらないもどかしさ

美緒がお母さんと話すときに、黙り込んでしまうことがありますが、わたしも同じく黙り込む子どもでした。

私はこどもの頃に、親と話をしていて自分の気持ちが通じないと感じるときや、頭から決めつけられて話をされるとき、もう話をしても意味ないな、と思って黙り込んでました。

暴言を吐いたり、ものに当たったりはしませんでしたが、ただただ部屋に閉じこもって静かに泣くタイプでした。

なんか、わかってもらえないって、つらいですよね。

言わないとわからない、そりゃそうなんですが、自分の気持ちを言葉にするのも難しい。

そして言葉足らずになって、うまく相手に伝わらない。

何度も経験があります。

語彙力と言ったら硬いですが、大人になってからも、自分には言葉が足らない、自分の中にもっと言葉をためて、そしてその言葉できちんと伝えられるようになりたい、と思っています。

 

美緒に寄り添うおじいちゃんの素敵な言葉たち

おじいちゃんの言葉で特に好きなものを紹介します。

繊細な性分は、人の気持ちのあやをすくいとれる。
ものごとを注意深く見られるし、集中すれば思わぬ力を発揮することもある。
へこみとは、逆から見れば突出した場所だ。
悪い所ばかり見ていないで、自分の良い点も探してみたらどうだ?

どうしても自分の短所にばかり目がいってしまう美緒。

真面目な美緒は、自分はだめだ、自分が悪い、短所を克服しないといけない、、と自分で追い詰めていってしまい、それが自分の心の重荷になっていました。

ひとりで考えていると、視野が狭くなってしまい、他のことが考えられなくなります。

そんな美緒を見て、短所を逆の視点でとらえて、言葉で美緒に示してくれています。

「へこみとは、逆から見れば突出した場所だ」 たしかに!

悩んでいる人がいたら、おじいちゃんの言葉を借りてかけてあげたいくらい、素敵な言葉です。

 

さらにこの言葉があります。

本当に自分のことを知っているか?
何が好きだ?
どんな色、どんな感触、どんな味や音、香りが好きだ
何をするとお前の心は喜ぶ?
心の底からわくわくするものはなんだ

自分はどんな「好き」でできているのか探して、身体の中も外もそれで満たしてみろ

進路や、これからやりたいこと、なかなか決めるのは難しいです。

まずは自分のことを知らないことには、どの方向に向かうのか決められません。

自分はどういう人間なんだろう、何者なんだろう、まずは自分の「好き」に焦点をあてて考えると、気持ちも明るくなってきます。

改めて自分を振り返って、さて自分のしたいこと、夢ってなんだろうと考えさせてもらった言葉でした。

 

こんな風におじいちゃんの言葉は、しっかりしていて迷いがなく、人を否定せず、まっすぐです。

なので美緒の心にも、読者のわたしにも、しっかり届く言葉になっています。

他にもおじいちゃんが語る素敵な言葉がたくさんありますので、ぜひ読んでみて下さい。

 

おまけ:登場人物のお気に入りの喫茶店がずらり

私は喫茶店が好きなんですが、この本には盛岡に実際にある喫茶店が書かれています。

盛岡は喫茶店文化が残っており、地元の方に愛されてきた店が多いそうです。

おそらく作者の伊吹さん自身が盛岡の喫茶店が好きで、その喫茶店を紹介したかったのでは?と勝手に推測しております。

 

本の中では、おじいちゃんや、おじいちゃんの姪にあたる裕子、その息子の太一が、それぞれお気に入りの店を持っています。

3人ともホームスパンの作業を一緒にしているので、仕事もプライベートも一緒になりがち。なのでそれぞれがひとりになりたいときなどに、喫茶店を利用するとのこと。

本に出てきた喫茶店はこちらです。

本の中に登場する盛岡の喫茶店
  • おじいちゃん・・・仕事のことを考えるときは本町通りの「機屋」

             一人になりたいときは紺屋町の「クラムボン」

  • 裕子・・・大通の「チロル」でチーズケーキを食べる


  • 太一・・・櫻山神社の近くで白の外濠が見える喫茶店(店名は出てこず)


  • 美緒・・・「carta」のばら色のりんごジュース


  • 美緒と太一が行った・・・川沿いにあるツタで覆われた店「ふかくさ」

食べログのサイトはこちら

ねるどりっぷ珈琲 機屋

クラムボン

チーズケーキのチロル 大通店

carta

ふかくさ

カフェより喫茶店が落ち着くわたし。

お店を調べてみますと、どれも行ってみたい、魅力的なお店ばかりです!
いつかこの本を片手に喫茶店めぐりしてみたい。

本書では喫茶店のほかにも、コッペパンに好きなクリームや具材をはさんでもらえる盛岡市民のソウルフードである「福田パン」なども紹介されており、この本を読めばなんとなく盛岡の雰囲気がわかる、ガイドマップのような感じ。

福田パン 長田町本店

影響されやすい私は、すっかり盛岡市へ旅行したくなりました。

 

おわりに:自分自身のこと、生き方を見つめ直すきっかけになる本

美緒のことを書いてきましたが、本書では美緒だけでなく、登場人物それぞれが道に迷い、悩んでいます。

そして悩みながらも一歩進んでいく姿が見られます。

自分自身にも置き換えて、改めて、自分はどうだろう、家族との関係や、これからどう生きていくのか、見つめ直すきっかけになりました。

そして、単純に 盛岡や、ホームスパンのこと、おじいちゃんのコレクションにあった美しい石や食器など、そして古い絵本たち・・・この本には魅力的なものがたくさんものが出てきて、自分の好奇心を刺激されました。

これも「自分の好きなもの、美しいと思うものは何か?」というおじいちゃん問いにつながります。

まずは自分を知ることから。

自分の好奇心を開放して、いろんなものに触れてみて、挑戦してみて、自分を知って、、それから前へ進んで行こうと思います。

本日は、お読み頂きまして、ありがとうございました!

それでは~

 

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