この本が読めて本当によかった。小説「この気持ちもいつか忘れる」(住野よるさん)

小説

こんにちは、ふみチッカです。

いつの間にか、住野よるさんの新刊が発売されていた・・・。

最近、本屋さんに行ってなかったので全然気づいておらず、図書館の新刊情報でやっと知ることができたわたし。新刊チェックのためにも本屋さんにちょくちょく行かないとですね。

はやる気持ちを抑えながら、『この気持ちもいつか忘れる』読ませて頂きました。

 

「この気持ちもいつか忘れる」の概要

新潮社サイトより、あらすじお借りしました。

 退屈な日常に絶望する高校生のカヤの前に現れた、まばゆい光。
それは爪と目しか見えない異世界の少女との出会いだった。
真夜中の邂逅を重ねるうち、互いの世界に不思議なシンクロがあることに気づき、二人は実験を始める――。

最注目の著者が描く、魂を焦がす恋の物語。
小説×音楽の境界を超える、新感覚コラボ!

新潮社サイトより

こちらの本は、2020年10月に発売された小説です(全384ページ)。

住野よるさんの前回の著書『麦本三歩の好きなもの』が2019年3月に発売されているので、1年以上ぶりの新刊となります。

わたしを含め新刊を楽しみにしていた方も多いのではないでしょうか。

 

住野よるさんの著書紹介

住野よるさんの著書に、

『君の膵臓を食べたい』
『また、同じ夢を見ていた』
『よるのばけもの』
『か「」く「」し「」ご「と』
『青くて痛くて脆い』
『麦本三歩の好きなもの』

があります。

わたしは「キミスイ」ブームのときは全く読んでなくって、勝手に「若者の中ではやってる小説でしょ?」ぐらいの認識しかありませんでした。しかしあるときに、『また、同じ夢を見ていた』を読んだことがきっかけで住野さんのお話のファンになり、それからすべての小説を読みました。

やっぱり流行っているもの、人気があるものには理由があって、せっかくだから同じように楽しんだりできたらいいし、興味がなくてもちょっとのぞいてみることは、大切だなぁと思ったのでした。

もしかしてわたしのような認識で、「若いひと向けの小説」と思っている方、もったいないです。一度気になる題名のものを手に取ってみて下さい。どの作品もおすすめです。

 

「この気持ちもいつか忘れる」の感想

恋愛という概念がない女の子に恋をした

このお話の主人公は男子高校生のカヤ。
そしてそのカヤが出会ったのが、光っている目と爪しか見えない異世界の女の子チカ。

お互いの話をするうちに、チカに対して恋愛感情を持つようになったカヤ。

しかし、チカの住む世界には、”恋愛”という概念がないんです。
”好き”という気持ちはありますが、家族や友人に対する”好き”という感情で、誰かに恋をするということがない。恋人という概念もなくって、結婚は家が近いとか仕事とかで、都合のいい人とするそう。

なので、いくらカヤが恋愛感情として好きだと伝えても、チカには伝わらない。

 

もともと”恋愛”という概念がなかったら・・・?

生まれたころから、家族や周りにいる人や、テレビやマンガなどから”恋愛”というものが普通にあるのがいま生きている世界。ですが、”恋愛”というものがない世界なら、そもそもそんな感情が自分の中に起こらないでしょう。

もしかしたらチカの世界にもそういう感情が存在しているのかもしれないけれど、その感情に名前がついていないだけかもしれない。わたしたちの生きる世界でも、まだ名前のついていない複雑な感情があるはずです(ときどき、自分の気持ちをうまく伝えられない、この気持ちをうまく言葉にできないことで悶々とするときがあります)。

その点、わたしたちの世界では”恋”と呼ぶ感情があって、そういう共通の認識があって、伝え合うことができるのは、とても貴重なことのように感じました。

 

こんなキスシーンは初めて

チカの世界にはキスという行為もありません。

カヤがチカへの恋愛感情を伝えたとき、チカは「その気持ちは分からないけれどカヤの気持ちを大切にしたい」という思いで、キスの仕方を教えてほしいと言います。

(※チカは目と爪だけが見えている状態なんですが、実は触れることができます。)

キスという行為も概念もないひとに、その方法をひとつずつ教えながら行うキス。

決して愛にあふれるとか、熱のこもったというシーンではないですが、たどたどしくもせつない気持ちになってくるシーンでした。

伝わらない思いに悲しくなるカヤですが、「チカへのこの気持ちはずっと忘れない」と言うのでした。

 

これ以降、ネタバレの要素を含む文章になります。小説を未読の方は、ご注意下さい。

 

忘れたくない大切な思いがある、でも忘れてしまう

チカと過ごしたときから15年のときが経ち、大人になったカヤ。

高校時代の同級生である紗苗という恋人もいますが、チカと過ごしたあの時間が、自分の人生にとって一番の”突風”の時期であり、いまも含めたその後の人生は余生として過ごしている感じ。

しかしながら、チカへの思いを当時と同じように鮮明に思い描くことができなくなっていることに気が付きます。

ここで題名である『この気持ちもいつか忘れる』になるのか!とはっとしました。

 

わたしもふつふつと思っていたことがあります。

恋愛に限らず、誰しも忘れたくない気持ちやできごとがあると思います。

その当時はものすごく好きだったひとやモノについて、好きだったことは覚えていても、同じ熱量の気持ちがよみがえってくることは難しいです。

あんなに好きだったのに、同じ気持ちになることができない、それがつらく、自己嫌悪になることも。

イヤなことは忘れたいけれど、大切なことは覚えておきたい。でもそんなにうまくはできてなくって、時がたてばイヤなことも忘れていくのと同じように、良かったことも同じように忘れていってしまう。

大切な忘れたくない思いを、そのままパッケージにして、置いておけたらいいのに。

わたしは今の生活にそういう熱を持って好きなものやひとがいないから、とくにそう思ってしまうのかもしれません。

だから、忘れたくない思いが薄れつつあることへの不安やあせりや怒り・・・そんなカヤの気持ちが、分かりました。

 

そんなカヤに対して恋人の紗苗は、「気持ちはいつか忘れてしまうし、忘れても大丈夫」と言います。

だから今、その自分の心と大切なものに恥じない自分でいなくちゃいけない。そうでいたい。悩んで苦しんで今を積み上げていくことしか出来ない。それを繰り返した時に、チカを好きだった自分が確かにいたっていう今が出来る。音楽に影響を受けた自分は間違ってなかったって今が出来る。そうして生きていくことしか出来ないんだよきっと。だから、もう、いいよ。

高校生時代、”チカを好きな今”から、大人になって”チカを好きだった今”へ。

今を積み重ねて生きていくことしかできない。

過去にしばられすぎると今を生きていくことができなくなってしまうし、過去を肯定できるのはこれからの自分の行動によってのみ。

「あの頃は良かったなぁ」と思い出して味わいたいような過去があることは幸せなことであるし、忘れたくないけれども、そんな過去に恥じないように今を生きていく、ということ。

どうしても過去や未来へ目が向いてしまって、今生きていることをあまり味わうことのできていなかった自分に、気づかせてくれた言葉でした。

 

おわりに:

自分の中のもやもやとしていた感情を物語として読むことができた本。
この本を読むことができて、本当によかったです。それぞれが抱えている思いを見つけて、すくい取ってくれるような物語を、住野さんは届けてくれますね。

自分の思いのままにだらだらと長い文章になってしまいましたが、
お読み頂きまして、ありがとうございました!

『この気持ちもいつか忘れる』どうぞ、読んでみて下さい。

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